骨董屋の古い竹ざる

竹ざる


「ああ、それ持って帰れ」


手に取って、しげしげと竹ざるを見ている自分に向かうてそう言うてくれるがです。大事なものなのでは?と聞くと、いやいや自分の作ったものではないけれど、骨董屋で見つけて面白いものなので漆をぬって壁飾りにしようと思いよった。そんな事を言われるがです。


竹職人とは不思議なものやにゃあ、と感じる時があるがです。もう初老という年齢の方でもみんなあ、子供のような心を持っちゃある。短パンにランニングシャツで夏休みの工作が面白くなって熱中しゆう、そんな、真っ直ぐな、無邪気な澄んだ心があるようちや。とにかく手を動かす事が好きながぜよ。


けんど、それだけではないぞね。虫籠を持って、あの小道、あの小川走りまわりよった夏の日を思い出すような心。そうそう、好奇心かにゃあ。いくつになっても、モノ作りへの好奇心をなくしてないがやきに。まっこと納得した。「ここが、こうで、ああで......」他の竹籠も取り出して一生懸命に説明していただく。幸せそうな横顔みながら納得した。


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