竹職人の威厳

竹籠編み


いままでの、ほのぼのとした優しい笑みは消え、キリリとした口元。竹編みを始めた途端、おばあちゃんは熟練のプロの竹職人の表情になるがぜよ。鮮やかという言葉がピッタリくるような手さばき。寸分の狂いもない手仕事に、この道一筋の職人の凄みを感じてしまいます。竹ざる竹籠を編み始めると、職人さんの世界になるがやき。その迫力に黙って見守るしかない世界。この時も、言葉をかけることも出来ないようなおばあちゃんの物作りの世界、ただ、ただ圧倒されその格好良さに見とれるだけながちや。


マンゴク


実用的な竹細工を作りゆうという自覚。どんな重たい物を入れても、荒っぽい使い方をしてもビクともしない、へこたれない堅牢な竹籠の作りは、外からは見えない口部分の縁にも見ることができるがです。長い一本の竹ひごで編み込んでいっちょりますが、その竹ひごを縁で切ることなく、ネジって縁にかけた状態で編み続けていくのです。こうする事により編み込みの丈夫さは最強となります。


竹ひご


こちらの竹工房では力のいる竹ヒゴ取りと仕上げが男性の仕事。編み込みが女性の仕事と代々役割が決められちゅうがですが、丸い竹から細い細い竹ひごを取るのも指の感触だけが頼りの熟練の技。一見、同じような仕事に見える竹ヒゴ取りも竹籠のやわらかなカーブを編みあげるのには同じ幅の竹ヒゴを使うというワケではないがです。マンゴク(万石)には細さが3種類ある竹ヒゴを使い分けしゆう。竹編み中央部分と両脇では底の曲線の形が違います。両脇ほど細くしなやかな竹ヒゴで編み込んでいくがです。


工房の窓から外を見たら、すぐ近くの山で真竹が風にゆらぎよりました。これらの竹細工の材料は、そこの土手から川を渡り伐りだされ、また長い竹を肩にかたいで川を渡って帰ってくるそうです。ああ、一度でエイきにそんな職人さんの姿を見たいぜよ。青々とした長い竹をかたぎ片手には刃物をもってズボンの裾をまくりあげて歩く姿は、さぞ素晴らしいろう。


そうそう、できたら自分も長い竹をかたいで川を渡ってみたいぜよ。今の若いものは竹もかたぐ事ができん。そんな風に思われちゅうがやったら名誉挽回のチャンスじゃあ。自分は、竹屋。竹をかたぐ事が専門やきに、誰よりも太い、長い竹をかたいで驚かせちゃろうかにゃあ。まっこと、びっくと楽しみができたちや。


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