囲炉裏からたちのぼる煙が日の光の中をゆらりゆらりと見えよります。パチパチ......。時々音をたてる薪の横におったら、なんとも懐かしい、小さい頃に戻ったような気持ちになるがです。自分の小さい頃には、まだまだこんな昔ながらの囲炉裏か残っていて、火を囲んだ団らんもあったぞね。
そう言うたら囲炉裏も、そうですけんど、五右衛門風呂と呼ばれよった釜のお風呂もまだありましたし、台所には大きなカマドもあったちや。それぞれ薪をくべるので家の外には薪が高く積まれちょりました。そう考えたら現代の家と違うて昔の家は火をつかうシーンが、まっこと(本当に)多かったですぞね。香りは記憶にこじゃんと(とても)残ると言いますけんど、囲炉裏の火の香りは幼い頃の記憶を走馬燈のように思い起こさせてくれる。いやいや心地のえいリラックスする時間ながです。
立ちのぼる煙は藁葺き屋根の防虫に役立ち、葺き替えるのは一生で一度と言われるくらい長持ちさせたそうです。まっこと昔からの生活の知恵というのは凄いものですちや。そして、この煙が生み出すもうひとつの逸品が煤竹(すすたけ)。藁葺き屋根の一部に竹が使われちょりますが、その竹も長い年月の間、煙に燻され渋い渋い色合いに変色していくのです。
茶華道の高級竹材とした珍重されますが、100年、150年前の竹やし現代の暮らしでは囲炉裏の生活が皆無ですきに、これから、ますます希少価値が高まるので貴重な竹材と言えるがです。ちょうど色合いが薄く見えている所は縄でくくられていた部分。この煤竹を竹バックに創作されて百年の風雪を耐えた竹に新たな百年の命をふきこむ。竹芸界の巨匠渡辺竹清先生がおられますが、とにかく特殊な環境で100年という時間を過ぎた竹なので、竹の性質も一本、一本全てまちまちで、乾燥しすぎて竹細工に使えない竹も多いと聞いた事がありますぞね。人の一生より長い時間を超えてきた竹。煤竹を使うた作品づくりはまさに時間職人との二人三脚ではないかと、いっつも思うがぜよ。
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