鰻の想い出

竹製ウケ


鰻の稚魚が少なくなって鰻が高価な食材となり、庶民の味ではなくなりつつあるようです。日本人には親しみがありますし、何より美味いし、夏のスタミナ食として無くてはならない食べ物だけにとかく話題にのぼりがちな鰻。ところが虎竹の里あたりでは、ほんの30年前までは鰻は買うものでも、食べに行くものでもなく「捕る」ものやったがです。だから、竹製のウケは、まるで日用品のように納屋に置かれてましたし、ウチの実家にも、おじさんの家にも当然のように鰻をさばくためのキリが常備されちょりました。


キリとは、あの穴をあけるキリですか?何に使うのですか?ああ、良く聞いてくれましたぞね。鰻は、こじゃんと生命力が強くて骨になっても動くくらい。だから、さばく時に頭をキリで、まな板に打ち付けよったのです。今思うと、びっくと残酷のようにも思いますけんど、自分たちは、そうやって自然な川から自然な鰻を食べて育ちましたぞね。まあ、鰻の話はたまにしますのであまり長くはお話しませんけんど、このウケはそれにしても大きい。竹虎のうなぎうけ(鰻筌)の2~3倍はありそうなちや。一体、どれくらいの鰻が入りますろうか?


用水路


今日は、どうしても言うておきたい事は、この用水路。何の変哲もない、田んぼの横を流れる用水路ですが、こんな小さな小さな流れにもなんと、当時は鰻がいっぱいおったのです。どうです?にわかに信じられないかも知れません。もちろん、自分の小さい頃には、こんなに小川をコンクリートに固めてはおらず石を積み上げた用水路で、鰻や小魚が身を隠せる穴が沢山ありました。けんど、同じような、こんなに小さな川の流れです。だから、自分達もこんな小さな用水路にもウケを仕掛ける事があったがです。結果はどうだったか?実は、今までで一番成績のよかったウケは、このような用水路に仕掛けたモノでした。田植えをした稲が日に日に大きくなっていく虎竹の里の光景。梅雨の中休みに、あぜ道を歩きます。


「おーーーい、こじゃんと(とても)鰻は入っちゅうぜよ!!!」


あの頃の、川の流れと友達との大きな歓声がどこからともなく聞こえてくるような気がするがです。


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