安倍川の祖父

竹職人


静岡県の安倍川は江戸時代は交通の要所やったきに、大きな荷物、小さな荷物、色々な荷物を運搬する今でいうコンテナとして竹籠が重宝されて、かなり編まれよったみたいです。節間は長くはないものの、粘りがあり強い竹が多いと聞きますきに、遠い昔には、さぞかし竹職人さんも沢山おったがやろうにゃあ。


土手のすぐ下に工房を構えられちゅう竹職人さんに、まっこと(本当に)久しぶりにお会いさせてもろうたがです。毎日、毎日手先を使う仕事をしゆうきやろうか?まだまだ、こじゃんとお元気そうで嬉しゅうなってきます。


「安倍川と言っても知らない人は多いけど、安倍川餅の安倍川だよ。」


「ああ、あの安倍川餅ですか!」


ここが発祥の地と教えてもろうたがです。だんだんと、あかね色になってきた夕刻時、一緒に土手の上に立って川の向こうを眺めよったらフワッ~と気持ちのエイ風が頬をなでていくがです。


安倍川


ゆったりした河川敷の遠くに見える木々の方から子供達の楽しそうに遊ぶ笑い声が微かに聞こえてくるきに、ふと振り返ったら、


「ありゃあ?おじいちゃんかよ?」


職人さんの姿に一瞬、祖父が重なった気がして、びっくと心がぬくうなったがぜよ。高知から、こじゃんと(とても)離れてここまで来たけんど、まっこと竹を訪ねて歩くいう事は祖父の足跡を訪ねるいう事やと、つくづく思うがです。


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