さすがポンカンや温州みかん、文旦、ビワなど、美味しい柑橘類の里でもある虎竹の里ちや。冬と言うたち太陽がサンサンと照り輝いちょります。こじゃんと(とても)、エイところぜよ。竹虎から、ほんの数分、桜並木の坂道を上がったところにある安和駅から眺めると、目の前には太平洋が広がって、まっこと気持ちがエイが違うぞね。
今は小さな無人駅となってしもうちゅうけんど、ワシの幼い頃には3人ばあ駅員さんがおって、買い物に行くおばちゃん、仕事帰りのおんちゃん、行商の大きな荷物を抱えたお年寄りの方、ワイワイと色々な人が乗り降りする賑やかな駅やったです。
今でもこうやって、ここに立つと、あの遠い日、チカコのおばちゃんがまだ走りよった蒸気機関車にのって岐阜に嫁いでいった時のことを思い出すちや。モクモクと煙をあげて走る汽車があのトンネルに吸い込まれていった事が、まっこと(本当に)この間の事みたいな、このホームに、皆が並んで見送ったがぜよ。小学校にあがっても木造の駅舎の周りに自転車をとめて良く遊んだもんじゃ。ここから浜に走りおりて追いかけっこもしたにゃあ、懐かしいにゃあ。
今は想像もつけかんけんどワシが生まれるまだ前には、ここから日本唯一の虎竹を貨車で出荷しよりましたきに24時間体制で竹材を製造しちょってから、ここの安和駅から積み込みしよった言います。
「ええっ?本当かよ...?」
その頃の事が、びっくと信じられんばあな、のどかなホームから、
「おまん、その頃の事を知っちゅうかえ?」
浜の向こうに見える双子島に聞いてみるけんど、静かに波が、寄せては、返すだけながです。
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