シュロ竹のある商家レストラン

シュロ竹


この店は、また雰囲気がエイが違う。ほのかに足元が見えるばあな暗さといい、ヒンヤリした空気感といい、ちょっと昔にタイムスリップしたみたいな気分ちや。けんど、ワシみたいな田舎モンには、まっこと似合わんにゃあ。店内の細い通路を、あっち曲がり、こっち曲がり、ようやっと腰を下ろしたテーブルに、何と、たまるか!キャンドルが揺らぎゆう。おまん(君)!ワシんくの家じゃあ、ロウソク使うがは、台風の時だけですぞね!停電したとき)


それにしたち周りのお客さんはえらい上品やにゃあ。暗うて遠くの席の人はシルエットしか見えんけんど、話し声も笑い方も妙に抑えちゃある。もしかして、ショッカー(秘密結社)か何かやろうか?まあ、そんな古い話は、どうでもエイぜよ。おっと、何やら、パリッとした白シャツに真っ黒い長い前掛けをして髪の毛をビシッとまとめあげた女の人が来ましたちや。ナイフとフォークをたまるかスマートに、かつ綺麗に並べってくれたがやけんど、「すみません、お箸もらえるろうか...?」(携帯箸持ってきたらよかったぜよ)お姉さんの目がキラッと光ったような気がするちや。


おおの、濃厚なソースがかかった魚のソテーやけんど、ひとっちゃあ、美味う感じんがぜよ。しっとりした城下町。堀をめぐらせた石垣づたいに歩いてきた店。昔は商家の船着き場やったいうけんど、柱ひとつ、窓ひとつにもまっこと重厚で風情があるにゃあ。ふと、中庭みたら、シュロ竹が天をめざしてこじゃんと伸びちゃある。こんな作務衣に、龍馬ブーツがイカンかったろうか?(それを言うたら、いっつもやいか)


周りがアベックばっかりやきやろうか?こじゃんと(とても)妙に居心地が良うない店やけんど、シュロ竹ながめよったらなんやら、ほっとするがぜよ。「竹」が付いちゃあるきか?そんな事ないろう。まあ、けんど、おおきに、おおきに。おおきに、シュロ竹。


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